ティラスイールという世界があった。フォルティア、メナート、チャノム、アンビッシュ、ウドル、オルドス、フュエンテ、ギドナ。8つの国からなる世界は、その周囲を大蛇の背骨と呼ばれる険しい断崖と、ガガーブと呼ばれる巨大な裂け目により分断され、外界との繋がりは未だなかった。むろん、海原を渡り未知の世界を目指す者もいたが、人々はまだ、長い航海に耐えうるだけの技術を持たず、沈黙の海で帰らざる者となった。未知なる世界に囲まれた土地、それがティラスイールだった。 魔女の海 フォルティア、メナート、チャノム、ウドル、ギドナの海岸線に面する内海を魔女の海という。伝承に残る多くの魔女伝説が、この内海に面した浜辺より始まることから、いつしかこの名がついた。内海は穏やかで、半透明の美しいヒレを持つパームスや、まるで、新雪を身にまとったかのようなスノーサーモンの良き漁場である。 ガガーブ ギドナの西側を北から南へと分断する巨大な大地の裂け目、ガガーブ。この裂け目は、人が国家という形態を作りだす以前から存在したものである。太古、西方には赤の部族と呼ばれる騎馬民族がいた。ギドナの伝承によれば赤の部族が襲来した際、にわかに天の雷が大地にほとばしり、荒野に巨大な裂け目を造り出し、侵略者の襲来を阻止したとされる。ガガーブは海面まで、近い所でも200ミロ、最大幅1000ミロはある巨大な裂け目である。そこから吹き上がる乱気流は渡り鳥の針路すら狂わせた。まして翼を持たぬ人間にとって、未だこの裂け目を克服し、西方に渡る手段はない。 沈黙の海 北東部に広がる沈黙の海は、数千ミロも沖合いに航行すれば、波も風もその営みを忘れてしまう。何人もの船乗りが海の彼方を目指したが、誰一人として無事に戻ってきた者はいない。冒険者として名高い紫髭のイグレーン、老船長メイベル、さらにはメナート王の命を受けたバイロン卿…。この海は数多くの優秀な船乗りと船を飲み込んできたのである。文字通り、誰一人として語ることのできない沈黙の海だった。また、沖合いのどこかには、クジラよりも巨大な海獣、ガルガの巣があるとされている。 大蛇の背骨 南に目を転じると、アンビッシュ、フュエンテの南端を貫く大蛇の背骨が内陸との接点を奪っている。この山脈はアンビッシュの創世伝承の中に登場する巨人タナトーシスと大蛇サーペントの戦いで生まれたとされている。戦いは月が4たび天空に登るまで続いた。激しい戦いの末、タナトーシスの拳がサーペントを倒し、巨人は大蛇をその肩に背負い、勝ちどきを上げた。王都アンデラに近い2つの湖、「巨人の足跡」は、そのときの重みでできたものと伝えられている。巨人タナトーシスが投げ捨てた大蛇サーペントの体は世界一巨大で険しい断崖を持つ山脈「大蛇の背骨」となった。大蛇サーペントは倒れたが、今なお強靭な心臓は鼓動を続け、その血液は灼熱の溶岩となって山脈の中で息づいているという。事実、南東に位置する「大蛇の舌」と呼ばれる活火山は、イグニスのシャリネが作られるまで、何度となく噴火を繰り返した。 その様は、あたかも大蛇サーペントが獲物を狙い、舌を動かせているかのように見えたと文献では伝えられている。 キャプテン・トーマスの物語 ”白い渡り鳥”プラネトス号一隻で海賊王ラモンに戦いを挑んだキャプテン・トーマスの物語は、ティラスイール中の子供たちのみならず、大人にまで愛される物語である。特にエメラルド海での最後の彼らの戦いを綴ったくだりは、ティラスイールの者ならば誰もが一度ならず何度も読み返したことがあるぐらいである。 大魔道師オルテガ ロップ島での竜退治や悪魔と戦ったことで有名な伝説的な魔道師。現在の聖地オルドスの創始者であり、初代大神官でもある。力の調和を保つために魔法をチャッペルとカンドに分けたことでも知られる。
フォルティア
三方を海に囲まれたこの国には、北西からの貿易風が暖かい風を運び込む。そのために、ほとんど同緯度であるメナートとは、較べものにならないほど過ごし易い。王都
のルードは、そんな気候とルドルフ王の善政もあり、順調な発展を続けている。
自然も起伏に富み、景観も様々だ。ラグピック村近くにある水晶湖は、大空を克明に映すほど澄んだ湖である。そのほとりに祭られたディーネのシャリネは、この地方に住む人々の巡礼地として知られている。
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