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■ひめリク

【タイトル】 ルックとパット物語
【作者】 ひめリク

「また猫探し!?
敵をパパッと倒すような依頼はないのかよ。」
「仕方ないよ。どんな依頼でも
ちゃんとこなさなきゃ。まだ準遊撃士だし。」

 地方都心ロレント。
その一角を二人の少年が歩いていた。

「またアリルの子猫達だぞ。ったく何回目だよ。」
「まぁまぁ。元気だって事だよ。」

 二人は街を離れ街道を歩き始めた。

「最後に目撃されたのが
エリーズ街道だから……この辺りだよな。」
「この辺は人が少ないから
聞いて回るのは大変だね。」
「あ、じゃあエステルん家行ってみようぜ。
見かけたかもしんねぇし。」
「そうだね。行ってみよう。」

 街道の途中で脇道にそれる。
その先に一軒家が建っていた。

「おーい。エステル、ヨシュア兄ちゃん。」
「誰かいますか?」
「エステル達ならいないわ。
お仕事で出かけてるの。おかげでレンは退屈。」
「レン姉!!」
「レンさん、この辺りで猫見てないですか?
迷子になっちゃって。」
「そうね…。そういえばさっき
お散歩してた時に子猫が森に入ってく所を見たわ。」
「森って事はミストヴァルトか。」
「早速行ってみよう。
レンさんありがとうございました。」
「クスクス、気をつけてね。」

 二人は一軒家をあとにして街道を進み、
昼なのに暗く湿った森へと足を踏み入れた。

「ここで迷子を捜すのは大変だな。」
「ちょっと不気味だね。うぅ……。
早く見つけて帰ろ。」
「おい猫の足跡だ。しかも新しそうだ。」
「本当だ。これをたどっていけば見つけられるね。」

 足跡をたどり森の奥へと進んで行くと
開けた場所に出た。

「一気に開けたね。テントまであるよ。」
「なぁ、鳴き声聞こえないか?」

「にゃあ〜〜」
「みゃ〜う」

「テントの中からだね。」
「おーい。猫達ちゃんといるか?」
「にゃーお」
「にゃーご」
「うん。三匹ともいるね。よかった。
あとは連れて帰れば…」
「にやゃ〜〜ご!!」

 猫に気を取られていた二人は
いつの間にか魔獣に囲まれていた。

「なんだこの馬みたいな魔獣!!」
「と、とにかく猫達を守らなきゃ。」

 二人は得物を構え、魔獣に攻撃を加えた。
が、

「く、攻撃が効かねぇ。」
「アーツも効いてない。このままじゃ…」

「カラミティスロウ!!」

 森の中から何かが飛んできて
魔獣達を切り伏せていく。

「……思ったよりつまらなかったわね。さて皆
帰って来るし、お茶会の準備でもしようかしら。」

「何が起きた?」
「わ、わかんないけど魔獣倒れてるし、
猫達つれて今のうちに逃げよう。」

 二人は急いで森を出て、依頼主に猫を送り届けた。

「かなり振り回された。」
「でもイーダさんも喜んでくれたし。
遊撃士ってそれが一番大切だと思うんだ。」
「そうだな。…思ったんだけど王国を旅しないか?
もっと強くなるために。」
「そうだね。ちゃんと遊撃士になるためにも、
守るべきものをよく知るためにも。」
「よっしきまり。」
「ねぇ、あれって。」
「お、行こうぜ。」

 二人は走り出した。
遠くに見えるリベールの英雄と呼ばれる
二人組に向かって。

■ひめリク

【タイトル】 北の軌跡
【作者】 ひめリク

「おら、さっさとある物全部よこしやがれ。」
「や、やめてください。」
「誰が守ってやってると思ってんだ。」
 猟兵の男たちが略奪をしていた。

 そこに同じく猟兵の格好をした青年が現れた。
「やめろ貴様ら。離してやれ。」
「なんだてめぇ。」
「やめとけ、そいつはあの方の子飼いだ。
下手に争わない方がいい。引くぞ。」
「ちっ、くそ。」
男たちはあっさりと引き上げていった。
「あの、ありがとうございました。」
「あぁ気にするな。」
被害にあっていた女性は、
青年に礼を告げ去って行った。

 取り残された青年の背後から、
一人の男が歩み寄ってきた。
振り返ることも無く青年は男に尋ねた。
「やはりあいつらも武力派ですか?」
「ああ。あの態度は武力派だろう。」
「最近のあいつらはやりすぎです。」
「確かにな。このノーザンブリアの地を守る為に、
外貨の調達することに異論はないが、そのために
自治州内部をないがしろにしていいはずがない。」
「しかし武力派は日に日に勢力を増しています。」
「猟兵団長の右腕の野郎が武力派として
推し進めてるからな。あいつ頭かたいし。」
「だからこそ貴方が台頭し、
組織を再編成していただきたいのです。」
「お前は俺を買いかぶりすぎだ。
ところでお前に頼みがあるのだが。」
「何でしょう?」
「ノーザンブリアの各地へ行き、
調査を行ってほしいのだ。」
「調査ですか?」
「ああ。あの事件から20年以上もたつが何か
腑に落ちなくてな。嫌な予感がするんだ。
それに気になる事もあってな。」
「気になることですか?」
「あ、いや気にするな。
とりあえず各地の調査任せたぞ。」
「はっ、了解しました。」

 かくして一人の猟兵が旅に出る。
貧困と猟兵の地、ノーザンブリア自治州。
そこは不条理な現実が突き付けられた場所。

「この土地をお前ら猟兵達だけに任せていられるか。
ここに住む者として俺は俺に出来ることをする。」

不可解な厄災、壊滅した大地。

「どんな状況に陥っても空の女神は私達を
見捨てはしない。信じ、祈り、行動するのです。
私も微力ながらお手伝いさせていただきましょう。」

得体のしれない力。

「これは一人の考古学者としての意見だけど
あの杭は古代遺物なんかじゃない。
古代遺物にあれだけの力はないわ。
そうあれは七つの至宝か、それに準じる何か。」

残されたいくつもの謎。

「かつての大公国の騎士団長として、
大公やその一族に仕えたものとして
この問題を無視することなどできん。」

明らかになる真相と陰謀。

「私に遊撃士として力がないからといって
あなたを見逃すわけにはいきません。
この支える篭手に誓いあなたを無力化します。」

立ちふさがる新たな敵。

「猟兵のくせに臆病な考え方している
お前らにはイライラする。
だが今はそれ以上に故郷を
脅かそうとしてるやつらが許せねぇ。」

浮かび上がる一人の存在。

「何もかも覚えてる。……あの時何があったかも。」

 これはとある猟兵とその仲間たちによる
奇妙な絆が織りなす物語。


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