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■マダオ

【タイトル】 特集!ミハエル・クルマン氏突撃インタビュー
【作者】 リベール通信社王都支部所属、マイツ・ダウム・オルフ

——導力は、悪である
先日、ミハエル・クルマン氏は我々のインタビューに快
く応じ、話題となったその言葉を最初に口にした。氏は
続けた。
「私達は、確かに、導力革命以降そのメリットを享受し
てきた。そして、生活は飛躍的に豊かになったのも事実
だが、我々は『大切な物』を喪失した」
氏の言う大切な物とは、平和や、時間、そして、家族。
革命が発生してから五〇年と経つが、本当にそれらの物
は喪失されたのだろうか。
「君は……若いから知らないだろうが、昔は違ったもの
だよ」
氏は、私の眼を見据えて、そう語り始めた。
「導力革命が無ければ、百日戦争があれほどの犠牲者を
生む事も無かっであろうし、導力が無ければ、ここまで
活発な国富を争う情勢も発生しなかったであろう」
確かに、現在の国際情勢は朝も夜も関係なく激しく変化
しており、リベールも例外ではない。次に、氏が挙げた
のは時間の使い方だ。
「昔は、時計塔なんてただの象徴だったんだがね」
我々が、時間に区切られた日々を過ごしているのは、確
かに事実である。多くの労働者は、労働時間以上の労働
を、実質していると言っても過言では無い。
「昔は、時間なんて気にせずに太陽を見て畑仕事に精を
出したものさ。家族と一緒にね」
導力革命以前、リベールでは確かに今より農家の数は多
く、現在でもなお、田舎の地方では農家で生計を立てて
いる人が多くいる。彼らは、今でも家族全員で仕事に精
を出しているが、都会ではそうではない。
「夫婦揃って工場に働きに行く家庭が、幾つあるかなん
て知らないけどね」
と、氏は笑いながら、そう付け加えた。氏は、導力を精
神的な面において批判する一方で、存在そのものについ
ては批判的では無い。
「私は確かに導力を悪だと信じているが、それは導力が
私達を精神的な堕落へと導いているからだ……その、魅
力的な力によってね。今までは多くを望まなかった私達
が今では多くのものを望み、欲するようになった」
では、私達はどのように導力と付き合っていくのが最善
の策なのだろうか。
「導力の制御が出来るだけでは駄目だね。自己の制御も
出来なくては」
と、氏は言った。自己の制御とは、一体何なのか。
「多くを欲っさない、という事さ。私など年を取って、
多くの旧友が一足先に逝ってしまったが……金や権力、
そんな物は頭の隅において、生きているだけで幸せだと
思うようになった。これが理想だね」
と、氏は続けた。
「導力は、それを簡単にするだけの存在でなければなら
ない。それによって、人を拘束したり、家族と一緒にい
る大切な時間を減少させたり、一部の愚かな人間の金や
権力に対する強欲で多くの人間を悲しませてはならない
……だから、自己の制御が必要なのさ」
今回のインタビューによって、導力の分野において最先
端の国でもあるリベール国民に、ミハエル・クルマン氏
の斬新な考えが知れ渡る事は、実に有意義な事であると
考える。

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